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そらごとそうこ

ここは、戦.国.無.双.2 (戦.国時代)の二次創作メインサイト。 ナチュラルにほもを含みます。苦手な方は、急ぎ足でどうかお逃げ下さい。気分を害されても責任もてませぬ。(携帯から見ると画面が多少おかしなことになっているかもしれません。←ご指摘頂けると幸い) なお版権元さまゲーム会社さまとは関係ございません。全て萌え故の妄想でございます。

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2008'10.18.Sat
前サイトからの移動です。

パソのクラッシュで、手元にデータがのこってないので、移動作業がじかんかかってます(涙)
ちょっと手直ししたいなあとも思ったりしていて、余計にかかってます。


- 絶滅危惧種- <慶兼>
author : hiyuki   2007.08.08





 そなたがうつくしいと思うものを教えてくれないか、慶次。

 兼続とはよく、言葉遊びや問答といったことをするが、その問いかけは実に唐突だった。
 はて、今回は何をどうしてそのような事を問うてきたのだろうかと兼続を窺ってみるが、彼はあいかわらずにこにことした笑みを浮かべているだけで、その真意を探るのは実に難しそうに思えた。
 そうだねえ…、と呟いて、考えるふりをしながら兼続の様子を窺い続ける。
 兼続の問いの多くは、ふつうの奴ならばどうでもいいと思うような事が多い。生来の好奇心の強さのたまものか、彼は人に問う、ということに羞恥を覚えるようなことはなく、おやと思えばすぐに口にだすからだろう。
 それでも何度かに一度は、慎重にならなければならない問いもあるのだから、一瞬どきりとしてしまう。
 決して、彼が他人の答えによって結論や行動をゆだねているからではない。
 答えそのものは、兼続自身の中でもう出てしまっている。
 しかし慶次の答えを、後一歩を踏み出すための後押しにしているだろうことはわかるから、うかつに答えられないだけだ。
 しかもその問いかけ方は、普段のどうでもいいようなものの問い方とまったく同じで、至極区別がつきにくいのだからたちが悪い。
 慶次はふと視線を彷徨わせ、兼続が先程まで見ていたものが何かを知った。
 その瞬間、嗚呼それでかと納得して、ならとりあえずは無難な答えから始めようかと口を開く。
「…そうさねえ、その桜なんかも綺麗だと思うがね」
「そうか、慶次もそう思うか」
 兼続はにこりと笑みを深くした。
 問いを言葉にする前に兼続が見ていたのは、庭に咲く桜の花だった。ちょうど今が満開の時を迎えている。
 おそらく彼もまた桜をうつくしいと思い、己がどう思うかを聞きたくなったのだろう、と、慶次は解釈することにした。
「桜と言わず花のほとんどは綺麗だねえ。あとは越後の雪もいい。ちらちら降ってくるさまは見ていて飽きないね。朝焼けなんかも綺麗だが」
「秋の紅葉はどうだ?」
 慶次は頷く。
「ああ、それもいいねえ」
 するとそのことに気を良くしたのか、兼続は次々と名前を挙げてはどう思うかを問うてきた。
 さすが雅事にも深く通じている兼続だからか、慶次が首を横に振るものはひとつとしてなかった。 まあ、綺麗だとは思うが、なんとなく好みじゃないと思うものはいくつかはあったが。
「夕焼けはどうだ?」
「確かに綺麗だが、なんとなく切ないからねえ。空もようってことでくくるんなら、俺は朝焼けのほうが好みだ」
 ……と、いったふうに。
 そのうちにそれは自然のものにとどまらず、貿易で手に入れたという硝子作りの器や、果ては人の話にまで及んできて、
「私は、戦場にたつお前はうつくしいと思う」
 と、言われたものだから、ごくごく当然のように慶次もまたこう返した。
「俺が一番綺麗だと思うのはあんただよ、兼続」
「……私?」
 慶次はつつ、と兼続の傍まで近寄ると、抱き込むように兼続の腰に手を回す。
「そうだよ。俺の目にはあんたが一番綺麗に見える」
「そ、そうか……?」
 抵抗することもなく体を預けてきた兼続は、慶次の腕のなかで困惑げに眉を寄せた。
 そうした仕草でさえ、いちいちうつくしいと思わせてくれるのだから、それはもう他のものの比ではない。
 それに事実、慶次の中にある慕情の念を抜きにしたとて、十人中十人が兼続は美男だと口をそろえて言うだろう。
 兼続は、納得がいかないというような顔をしていたが、しばらくして、
「そうなのか……。いや、だが慶次が言うならそうなのかな?」
 慶次を振り返ると、苦笑を浮かべた。
「おう、それだけは譲れないね。そのへんをもう少し自覚してくれると嬉しいんだがねえ」
「では心に留めておこう」
「そうしてくれ」
 それから、柄じゃないとは思うが、ほんの少しばかり甘い期待を込めて、慶次はねだるように兼続の黒くうつくしい髪を指で梳いた。
「ところで、あんたの一番はなんだい?」
「ああ、それはだな」
 兼続は目をすがめて、すまなさそうに微笑んだ。
 返ってきたのは予想とは違っていて、しかしそれもそうだと納得のできるものだった。

「私が一番うつくしいと思うのは、三成だ」

「……」
 たしかにあの男は綺麗だろう。
 兼続とは種類が違うが、それこそみな揃って頷くには違いない。
 だがこうして恋人同士身を寄り添わせている状況で、他の男の名を口に出すのは兼続くらいのものだ。
 こういう、素直なところも慶次が彼に惚れている要因のひとつだが……、
 しかしながら、ほんの少しばかり、己が一番だと言ってもらえるのではないかと期待したことが恥ずかしく、なおかつ嫉妬めいたものもじんわりと感じて、慶次は苦笑しながら兼続の額に額をこつんと当ててやった。
「たしかにあの御仁は綺麗だがね。俺はあまり好みじゃないねえ……」
 無意味に張り合うように言った慶次に、兼続はくすりと咽を鳴らす。
 そしてなぜか、自嘲めいた表情をした。
「それはそうだろう、慶次。おまえは三成には惹かれぬよ」


 慶次がその表情の意味を知ったのは、三成の首が落ちたそのときのことだった。




 「人は、滅びゆくものには奇妙なほどに、敏感ないきものだ。
 それがいかに脆く儚く、いずれ壊れてしまうか、消えてしまうことを無意識に知ることがあると、おまえは思わないか?
 だから無意識に、胸が締め付けられる思いがして――、
 人はそれを、うつくしいと誤解するのだろうと私は思う」






 
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